今年も性感染症学会に行ってきました!|シュシュレディースクリニック 戸田公園|埼玉県戸田市の婦人科・美容皮膚科

         
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医療コラム

今年も性感染症学会に行ってきました!|シュシュレディースクリニック 戸田公園|埼玉県戸田市の婦人科・美容皮膚科

今年も性感染症学会に行ってきました!

2025年12月21日(日)名古屋で開催された 第38回日本性感染症学会に参加してきました。

今回は昨年と違い、名古屋駅のすぐ近くのウィンクあいちというところが会場でした。
あいにくの雨模様でしたが、駅から近かったため傘を持たずとも大丈夫でした。

医師全体の中でも、性感染症を専門にしている医師は少なく、私もその一人ですが、特に泌尿器科の先生が多い中、産婦人科医はさらに少ないです。

昨年は発表しましたが、今年は準備不足で発表はできませんでしたが、他の先生の発表をよく聞いてきました。

私の興味のある分野は、性感染症の中でも最も新しい性感染症である「マイコプラズマ・ジェニタリウム」についてです。

このマイコプラズマ・ジェニタリウムという菌は、発見されてからまだ半世紀も経っていない菌で、日本ではやっと3年前に検査が保険適応になったもので、まだ周知されていないどころか、産婦人科医もよく知らない菌になります。

このマイコプラズマ・ジェニタリウムという菌が今回の学会の中でも、さらに性感染症全体の中で最も注目されている理由は、抗生剤が効きづらいということです。
性感染症学会では、この抗生剤を使えば95%以上の人が治るという治療については、ガイドラインでもその治療法が提唱されるのですが、このマイコプラズマ・ジェニタリウムについては、推奨される治療方法が無いということになります。
私のクリニックにも、この耐性化した(抗生剤の効きづらい)マイコプラズマ・ジェニタリウムに感染して困っている患者様がたくさん来院されます。

発表の中で、最も示唆に富むものとしては、内服治療としてはやはり、テトラサイクリンとシタフロキサシンの組み合わせ治療です。特にテトラサイクリンのうちミノサイクリンが効果がありますが、ミノサイクリンは副作用が強いため最初からミノマイシンを使うことはためらわれます。
そして、テトラサイクリンとシタフロキサシンのシーケンシャルセラピーよりもコンビネーションの方が効きが良いという発表を聞き、この治療法は当院で以前から実施している方法でしたので、他の施設の先生もそれを推しているのが分かり、自分の治療方法が間違った方向ではなかったと確認できました。
また、スペクチノマイシンの注射療法を発表している施設もありましたが、この治療方法は副作用が強く、連日7日間病院に通う必要性があることや注射代が高いことから、患者様から敬遠されがちであり、しかも内服の治療方法と比べて治癒率はそれほど高くないのかなと思いました。注射による治療の治癒率がどの程度なのかは発表されていませんでしたので、来年の発表に期待したいところです。

このようにマイコプラズマ・ジェニタリウムの治療については各施設手探りで治療しているというのが現状です。

また別の発表では、驚くべきことに、CSW(性風俗従事者)は淋菌とクラミジアの検査は必須になっているのに、マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査はルーチンでしていないので、CSWがマイコプラズマ・ジェニタリウムに罹患している率が非常に高く、クラミジアの罹患率よりも多くなっているとの報告がありました。なんとその数は、性風俗従事者の3人に1人がマイコプラズマ・ジェニタリウムを保菌していることになるとのことで、これはもはや、性風俗店に行くともれなくマイコプラズマ・ジェニタリウムに感染してしまうくらいの状況です。
本当に何とかしないといけない状況です!
しかも、抗生剤が効きづらい菌にすぐに変化してしまう耐性菌になってしまうので、治療が大変になり、性風俗店で費やした費用の何十倍もの治療代がかかってしまうかもしれません。
そして最も懸念されなければならないことは、一般の方への蔓延です。

その典型的な例が梅毒です。
梅毒は初めは10年位前に海外からの旅行者からCSWに感染したのが原因で日本で大流行していると考えられていますが、今や一般の人にも妊婦さんにも、そして赤ちゃんにも影響を及ぼすようになっています。

マイコプラズマ・ジェニタリウムは梅毒よりも治りづらい菌なので、本当に一体どのくらいの方が感染していて治療しなければいけない人がどのくらいいるのかが未知数であります。産婦人科医の中でこのマイコプラズマ・ジェニタリウムに着目している医師は私の他にいないと思いますので、まずは、同業の産婦人科医の先生方に、マイコプラズマ・ジェニタリウムについてよく知ってもらうことが私の重要な使命だと感じました。

マイコプラズマ・ジェニタリウムに感染して困っている患者様の少しでも助けになれるよう、これからも知識のアップデートを図り、正しい情報の発信や学会発表をしていきたいと思います。