卵管炎・卵巣炎とは
卵管炎・卵巣炎とは

卵管炎は、細菌などが膣や子宮を通って卵管に感染し、炎症を起こしたもので、卵巣炎を併発することがあります。
「下腹部がズキズキ痛む」「熱が続く」「おりものがいつもと違う」そんなときに疑われるのが卵管炎(らんかんえん)や卵巣炎(らんそうえん)です。これらはまとめて「付属器炎(ふぞくきえん)」と呼ばれることもあります。
放っておくと不妊症や慢性的な痛みにつながることもあるため、早めの受診がとても大切です。
炎症の程度によって症状はさまざまですが、典型的なものは次の通りです。
急性期や炎症が強いときには、強い下腹部痛と圧痛(押すと強まる痛み)があり、38~39度の発熱を伴います。膿性のおりものがみられることもあります。炎症が骨盤腹膜に及ぶと、吐き気や嘔吐、排尿痛などの膀胱炎に似た症状などを起こすことがあります。
慢性期になると、急性期の強い症状はなくなりますが、下腹部の鈍痛やひきつれ感、腰痛などが長く続きます。
また、卵管の癒着・閉塞によって、将来的に不妊症や子宮外妊娠の原因になることがあります。
女性の子宮の両側には「卵管」と「卵巣」があります。卵管は、排卵された卵子を子宮へ運ぶ細い管で、卵巣は卵子をつくる臓器です。このどちらか、もしくは両方に炎症が起こる状態を以下のように呼びます。
| 名称 | 炎症が起きる場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 卵管炎 | 卵管 | 感染が起こると卵管が腫れ、卵子の通り道が狭くなる |
| 卵巣炎 | 卵巣 | 卵巣に炎症が広がり、膿がたまることもある |
| 付属器炎 | 卵管+卵巣 | 両方に炎症が及んだ状態。発熱や強い痛みが出ることが多い |
多くは細菌感染によって起こります。代表的な原因菌は以下のようなものです。
卵管炎のおもな原因は、膣から侵入した細菌で、子宮頚管の炎症から子宮内膜、卵管と感染が波及して起こります。外陰部は肛門と近いので、主な原因菌として多いのが大腸菌ですが、性行為によるクラミジアや淋菌の感染(性行為感染症)が原因の場合も少なくありません。とくに最近、若い女性の間でクラミジア感染症が蔓延しているのが問題です。
そのほか、オーラルセックスなどによって、口腔内の菌が原因で付属器周囲炎を起こすことも知られています。
炎症が進むと、卵管が癒着して閉塞し、中に滲出液や膿がたまって腫れあがる(卵管留膿腫)ことがあります。卵巣や子宮、骨盤の内腔をおおう腹膜(骨盤腹膜)、直腸、膀胱などと癒着を起こすこともあります。
炎症が骨盤腹膜に及んだものを骨盤腹膜炎といいます。骨盤腹膜炎が重症になると、骨盤腔の下方(ダグラス窩)に膿がたまって、膿瘍をつくることもあります(ダグラス窩膿瘍)。
婦人科では以下のような検査で診断します。
必要に応じてクラミジア・淋菌のPCR検査を行うこともあります。
炎症が激しい急性期には、抗生物質や抗菌剤で治療します。症状が強い場合は入院が必要になることもあります。
慢性期には抗生物質の投与のほか、消炎鎮痛薬などの対症療法を併用します。
卵管留膿腫、ダグラス窩膿瘍、卵管閉塞による不妊、周辺臓器との強度の癒着などがあるときには外科的な処置(腹腔鏡や開腹による手術)を検討します。
慢性化するとやっかいな病気で、とくに若い女性にとっては深刻な不妊の原因にもなりますから、なんらかの感染のあとに症状が出たときにはすぐに受診してください。
卵管炎・卵巣炎は、放っておくと不妊症や慢性的な痛みに発展する可能性のある病気です。
「なんとなく下腹部が重い」「おりものが増えた」と感じたら、早めの婦人科受診を。
身体を守る第一歩は、自分の体の変化に気づくことです。気になる症状があるときは、無理せず相談してみてください。
軽い炎症で一時的に症状が落ち着くこともありますが、根本的に治るわけではありません。再発や慢性化を防ぐためには必ず医師の診断と治療が必要です。
卵管が癒着すると卵子や精子の通りが悪くなり、不妊や子宮外妊娠のリスクが高まります。早期治療がとても大切です。
はい。同時に治療をしないと再感染する恐れがあります。パートナーと一緒に検査・治療を受けましょう。