
ミレーナ(避妊リング)
ミレーナ(避妊リング)
ミレーナ®は、黄体ホルモンを子宮の中で持続的に放出する子宮内避妊システムです。ミレーナ®は避妊率が約99.8%と高く、1度挿入すると最長5年間効果が持続することが最大の特徴です。
またミレーナ®には月経量の減少や、月経痛を軽減させる効果もあり、月経困難症や過多月経の方の治療にも使用します。ミレーナ®の留置には少なからず痛みを伴います。当院では、麻酔を使用して留置することも可能ですので、極力痛みを避けたい方はご相談ください。
ミレーナは、約3cm四方のT字型の小さな器具で、「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンを子宮内に直接放出することで、主に3つのメカニズムに作用します。
これらの効果は最長5年間持続するため、避妊目的のピルの服用をせずとも、日常生活を快適に過ごすことが可能です。
また装着途中で妊娠を希望される方も、10分程度の処置で取り外しが可能です。取り外しの際は痛みはほとんどありません。
取り外した後は、2か月以内に自然に月経が再開し、以降妊娠が可能になります。
ミレーナの避妊率は非常に高く、約99.8%とされています。これは、数ある避妊方法の中でもトップクラスの確実性を誇り、一度装着すれば最長5年間にわたって安定した避妊効果が持続するという点が大きな特長です。
その他の避妊方法として、低用量ピルが知られていますが、その避妊率は正しく服用した場合で約99%、一般的な使用で飲み忘れなども含むと平均で約91%程に低下するとされています。また、ピルは毎日決まった時間に飲む必要があり、飲み忘れや体調不良による服用ミスが避妊効果を下げてしまう要因になります。その点、ミレーナは一度装着すれば日常的な管理はほぼ不要で、「使い方のミスが起こりにくい」という点で実用的な避妊率が非常に高いという大きなメリットがあります。
一方、男性主導のコンドームの避妊率は、一般的な使用で約85%前後とされており、避妊効果は低めです。使用の際に破損・装着ミスが起きる可能性があるほか、性交中に外れてしまうこともあります。コンドームは性感染症の予防には効果的ですが、確実な避妊を重視する場合には、ミレーナのような子宮内避妊具の方が優れているといえるでしょう。
このように比較すると、ミレーナの避妊効果の高さは非常に際立っており、「確実に避妊したいけれど、毎日薬を飲むのは不安」「ライフスタイルに合わせて自然に避妊できる方法を選びたい」という方にとって、非常に適した選択肢であると言えます。
ミレーナは、避妊だけでなく過多月経や生理痛の改善にも非常に効果的な治療法として広く用いられています。これは、ミレーナが子宮内に直接レボノルゲストレルというホルモンを持続的に放出する仕組みによるものです。
装着後、このホルモンが子宮内膜に直接作用し、子宮内膜が厚くなるのを抑える効果を発揮します。
通常、生理の際には、増殖した子宮内膜が剥がれ落ちることで出血が起こりますが、ミレーナを装着すると子宮内膜が非常に薄い状態に保たれるため、月経時の出血量が大幅に減少します。これにより、長年過多月経に悩んでいた方でも、出血量が明らかに減ったと実感するケースが多く、装着後1年経過した時点で、約20%の方に月経そのものがほとんど起こらなくなります。
さらに、子宮内膜が薄くなることで、経血の量だけでなく、生理痛も軽減されるというメリットもあります。
生理痛の主な原因は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質によって子宮が強く収縮するためといわれています。
ミレーナを装着することによって内膜の増殖が抑制されると、子宮を過度に収縮しなくなるため、毎月鎮痛剤が欠かせなかったような強い月経痛も、ミレーナ装着後にはほとんど必要なくなることもあります。
ミレーナは過多月経による貧血の改善にもつながります。「出血が多くて生活に支障がある」といった悩みを抱える女性にとって、ミレーナは身体への負担を抑えながら症状をコントロールできる有効な治療手段となります。
ミレーナは月経困難症や過多月経で導入されることが多く、将来の更年期ケアにも役立つ治療法です。
更年期障害は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少することで、自律神経や身体機能にさまざまな変化が現れる状態です。
代表的な症状には、ホットフラッシュと呼ばれる突然のほてりや・発汗・のぼせ・動悸・不眠症・イライラなどがあり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
このような症状に対する治療としては、エストロゲンを補う「ホルモン補充療法」が有効とされています。しかし、ここで注意が必要なのは、エストロゲン単独での補充は、子宮内膜が過剰に刺激されるため、子宮体がんのリスクが高まるという点です。
そのため、通常は「黄体ホルモン」を併用する必要がありますが、ミレーナを装着している方の場合、すでに子宮内に局所的に黄体ホルモンが持続的に放出されている状態にあります。
そのため、ミレーナを装着済みの方が更年期症状に対して、エストロゲン製剤のみを補充することで、子宮内膜を保護しながら安全に治療が行えるというメリットがあります。
更年期に向けた準備として、プレ更年期の段階からミレーナを活用するケースも増えています。
ミレーナの効果により、子宮内膜を薄く保つことで 月経血が大幅に減少します。
その結果、血液に含まれるタンパク質や分泌物が分解されにくくなり、嫌なにおいが発生しにくくケースがあります。
においの原因は、血液・組織・分泌物が体外に出るまでに空気中の細菌と反応して発酵することで起こるものです。
月経量が少なければ、このプロセスが抑えられるため、結果的に臭いが軽減されるという間接的な効果が得られるケースもございます。
※ただし、人によっては月経血が少なくなることによって、腟の自浄作用に変化をもたらすことが考えられ、臭いが逆に気になるようになるケースもあります。
臭いやおりものの変化がある場合には早めにご相談ください。
ピルは全身にホルモンが作用するため、吐き気・頭痛・むくみなどの副作用が出ることがあります。
また、年齢が高い方・喫煙者・血栓症リスクのある方にはピルよりもミレーナの方がおすすめです。
ミレーナはホルモンが子宮内に局所的に作用するため、全身への影響が少ないとされています。そのため 肝機能への影響も少なく、授乳中でも使用可能な点も大きなメリットです。
ミレーナを留置する際に、専用の器具を使用して行いますが、特に出産経験の無い方の場合には処置時に痛みを伴うことがあります。当院では、ご希望があれば麻酔をおこない、ほぼ無痛で留置をすることができます(別途麻酔料金がかかります)。
ミレーナ®装着後は、出血・腰痛・下腹痛といった症状がみられる場合があります。これらの症状は徐々に良くなることが多いですが、症状が長引いたり、痛みがひどくなったりする場合などは我慢をせずにご相談ください。
また、ミレーナ®装着中は以下のような症状が現れる場合があります。出血が長く続く場合や発熱、下腹痛などがある場合は早めにご相談ください。
*ミレーナ®が自然に脱出したり、ごくまれに子宮の壁に入り込んでしまったりすること(穿孔)があります。装着後は、ミレーナ®が子宮の正しい位置に留置されているかを定期的な診察が必要です。
月経が始まった日より7日目までの挿入をおすすめしています。
また、挿入後は、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後にミレーナ®の位置の確認をします。その後は状況に応じて1年ごとに検診を行います。
種類 | 費用 |
---|---|
ミレーナ装着 | 55,000円(税込・診察料別途) |
その他婦人科手術時にミレーナ装着 | 44,000円(麻酔代不要/ミレーナの診察料不要) |
ミレーナ抜去 | 15,000円(税込・診察料別途) |
ミレーナ入れ替え | 55,000円(抜去費用込・税込・診察料別途) |
麻酔代(ご希望の方) | 7,700円(税込) |
ミレーナ(IUS: 子宮内黄体ホルモン放出システム) は、高い避妊効果を持つ子宮内避妊具(IUD)の一種で、5年間有効なホルモンを放出し、妊娠を防ぐ働きをします。しかし、100%の避妊率ではないため、まれに妊娠するケースがあります。ただし、ミレーナの避妊率は 99.8% と非常に高く、年間1,000人の女性が使用した場合、妊娠するのは約2人程度とされています。国内臨床試験においては1年間で482例中2例の妊娠が報告されており、また海外臨床試験での5年目までの妊娠率は100 婦人年あたり0.14と報告されています。これは、低用量ピルやコンドームよりも高い避妊効果を持つことを示しています。
*ミレーナが子宮内にある状態で妊娠が継続すると、流産や早産のリスクが高まる ため、可能であれば早期に取り除く必要があります。
お勧めしません。ミレーナを留置するためには診察の器具を腟に入れて処置をするため、性交経験が無い方の場合、強い痛みを伴うことがあります。まずは、ピルなどの内服薬での治療をお勧めします。
留置することは可能です。一度も経腟分娩の経験が無い方の場合、子宮の入り口である頸管が細いため、ミレーナを留置する際に強い痛みを伴うことがあります。また、超音波検査で帝王切開の際に生じた子宮切開創の状況を確認し、安全に留置できるかどうかの判断が必要になります。
ミレーナを挿入後、1週間程度は性行為を控えてください。月経様の出血が数日間続きますので、その出血がおさまってきたら性交渉は可能です。また、ミレーナは子宮内にあるため、男性器が届くことはございませんので、性行為に支障はありません。ただし、性行為の際に異物感などの違和感を感じたら、ミレーナの位置がずれている可能性がございますので、お早めにご相談ください。
ほとんど気づかないことが多いです。脱出するときの痛みはほとんどありません。したがって、子宮内にミレーナがあることを確認するために、定期的な健診が必要になります。
国内臨床試験においては 1 年間で 482 例中 2 例の妊娠が報告されており、また海外臨床試験での 5 年目まで の妊娠率は 100 婦人年あたり 0.14 と報告されています。極めて低い数値ではありますが、妊娠する可能性はございます。
留置した直後より効果があります。①ミレーナ本体による受精卵の着床阻害、②子宮内膜が薄くなるために受精卵の着床を妨げる、③子宮頚管粘液の性状変化により、子宮内への精子の侵入を妨げる、の3つの機序により避妊効果を発揮します。
ミレーナを留置していても卵巣からは女性ホルモンが産生され、排卵も起こっていると言われています。PMSは、女性ホルモンの変動によって生じる症状のため、ミレーナを留置しても改善しない可能性があります。